鋼製砂防構造物の機能及び材料による分類

1. 区間及び機能による分類

 これまでに施工された砂防堰堤は,国土交通省砂防部より,「砂防堰堤の分類(平成29年3月27日)」(図1)として整理されている。砂防堰堤は,透過型と不透過型に大別される。透過型は,さらに閉塞型と堰上げ型に分類される。この中で,鋼製砂防堰堤の位置づけを機能面から整理したものを図2に,材料面から整理したものを図1.6に示す。これらの図は,機能と材料の一般的な使い方を基に分類したもので,現地条件や構造物の仕様によっては,この分類から外れて施工されている堰堤も数多くある。

図-1 砂防堰堤の分類

 鋼製透過型砂防堰堤は,透過部に鋼管フレームを組み込んで石礫を捕捉するため,閉塞型に分類され,土石流中の石礫及び流木を効率良く捕捉できる施設として位置づけられている。また,掃流区間においては洪水期に流送される流木を多量に捕捉することができる。
 鋼製不透過型砂防堰堤は,鋼矢板や形鋼を外部材に用い,この中に砂防ソイルセメントや栗石を詰めることで重力式砂防堰堤として活用され,施工の優位性のある現地で採用されている。また,緊急・応急対応として,ダブルウォール・セルには土砂を内部材として用いることができる。

図-2 区間及び機能による主な砂防堰堤の分類

2. 形式及び材料による分類

 「鋼材」のうち,「鉄筋」は鉄筋コンクリートにしか使わないので,主たる材料の「コンクリート」に,また,「鋼矢板」はソイルセメントの外壁材に使うので主たる材料の「ソイルセメント」に含まれるものとしている。「鋼板」は鋼製透過型砂防堰堤の接合に用いられるが,フレーム構造は「鋼管」で構成される。「形鋼」は鋼製枠堰堤のフレームに用いられるが,内部材である栗石で抵抗している。このため,「鋼材」で主要材料として使用されているのは,「鋼管」と「鋼線(ワイヤー)」と言える。
 「ブロック」の材料はコンクリートであるが,使用方法から「石」に区分した。
 「ソイルセメント」は土砂とセメントの混合で,性状から「転圧タイプ」「流動タイプ」「低強度ソイルセメント」に分類できる。材料の性質を考えれば「転圧タイプ」「流動タイプ」は「ソイルセメント」である。
 「低強度ソイルセメント」は,「土砂」の範疇となるが,現状では土砂のみで堰堤を構築することはなく,鋼矢板を外壁とした中詰め材に使用している。
 「粗石コンクリート」は石とコンクリートの2種類の材料からなるが,練り石積の発展と考え「石」の範疇とした。
 「ゴム」は緩衝効果を期待した補助材なので主たる材料とはしていない。
 「木」は化粧型枠として用いられることもあるが,木製堰堤は朽ちることを考えれば木自体で外力に対応するものではないため主たる材料とはならない。

 上記を踏まえると,主たる材料は「鋼材」「コンクリート」「土砂」の3つに大別でき,「鋼材」はその使い方や性質からは❶鋼管,❷鋼線の2つ,「コンクリート」は使い方の違いから❸コンクリート,❹ブロックの2つ,「土砂」は粒径と改良に集約すれば❺ソイルセメント,➏土砂,❼石の3つに整理できる。

❶ 鋼管:鋼管フレームで透過形状を形成した剛性の高い構造で,鋼管部材の間隔で土石流・流木を捕捉する。

❷ 鋼線:大変形によるエネルギー吸収で土石流・流木を捕捉する。鋼管,形鋼,鋼矢板とは使い方や設計方法が異なる。

❸ コンクリート:打継ぎ目処理により一体性を確保した重力式コンクリート砂防堰堤で,最も一般的な砂防堰堤の構成材料。コンクリートの補強に鉄筋を用いることがある。

❹ ブロック:ブロックのかみ合わせで安定性を確保する。設計方法は通常の重力式コンクリート砂防堰堤とは異なり,石積み堰堤に近い。

❺ ソイルセメント:土砂をセメントで固化する重力式堰堤で,外壁材にブロック,鋼矢板などを使うが,ソイルセメントのみで自立できるところが土砂や低強度ソイルセメントと異なる。

❻ 土砂:盛土形成して堰堤として使うが,このままでは耐久性がないので,ダブルウォールやセルなど鋼材を外壁材に用いて中詰め材に使用する。低強度ソイルセメントは外壁材が必要であり,使用方法及び性質から土砂の改良であるため,土砂に分類される。

❼ 石:石積堰堤は現存するが,現在では施工されていない。鋼製枠堰堤は形鋼で作った器に栗石を詰めることから石積堰堤に分類される。

 図-3は,主な砂防堰堤の材料❶~❼と,以下の項目①~⑥を考慮して分類したものである。

①「鋼管フレーム型砂防堰堤」は,鋼管同士を溶接またはフランジ接合で剛結した立体フレームを底版コンクリートに固定したラーメン構造である。鋼管フレームの最上流面で土石流中の石礫や流木を捕捉する。

②「バットレス型堰堤」は,「鋼管フレーム型砂防堰堤」と同様に最上流面を構成する鋼管で土石流中の石礫や流木を捕捉するが,最上流面の部材をコンクリート扶壁で支えるバットレス構造である。

③「柔構造物」は施設ではなく構造なので,これを使った砂防堰堤の一般名称は「ワイヤーネット堰堤」とした。

④「堰上げ型スリット堰堤」は「コンクリートスリット堰堤」に区分される。「鋼製枠堰堤」や「ソイルセメント」を使ったスリット堰堤もある。

⑤「鋼製ウォール堰堤」は「セル」「ダブルウォール」を含む一般名称であり,「土砂+鋼矢板」に区分される。

⑥「シャッター堰堤」は開閉方式が色々あるので確定した構造はないが,「堰上げ型スリット堰堤」に区分される。

図-3 型式及び材料による主な砂防堰堤の分類